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究極の客

いまさらだが、スティーブ・ジョブス的っていうのは何なのかと考えるに、他の経営者とかじゃなくて彼だけにありそうだなと思うのは、彼は「究極の客」になれるっていうところだと思う。世の中のユーザーに「どうですか?」「何がほしいですか?」て聞かなくても、「こういうものが良いもの」と判断できる感じ。逆に、多くの社長さんというのは、たとえば60歳の個人としての好みを超えた視点を持ちづらくて、自信を持って「俺がいいと思ったものは売れる」とは言えないだろうと思う。

じゃあジョブズが「60歳の個人としての好み」を超えた視点をどうやって持っていたのかということなのだが、自分が見ている感じで言えば、彼は「行動と予測意識」という判断軸を持っていたのではないかと思う。

iPhoneは充電プラグにつなぐと、その瞬間1秒くらいだけ大きく「○○%充電済み」と表示される。充電プラグにつなぐ時、ユーザーは無意識に「あと何%くらいか」という予測の意識を持ちながら行動する。彼はきっと、自分が無意識のうちに感じることに敏感で、どういう予測を持って動いているかというのを自分自身で把握して、それに寄り添うプロダクトを作りたかったのではないかと思う。無意識を意識するみたいな観点だと、彼が禅みたいなものを気に入っていたのには合点がいく。

彼はプロダクトではユーザーの行動や予測意識にうまく寄り添うことを目指したし、広告活動では予測をうまく裏切ることを目指したと思う(One more thingとか)。「何かある」とわかっていて、しかし驚く内容があるというのは、予測する動物であるヒトには最大のご褒美なのだ。