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因果の逆転、アジャイル、小さく回すこと

うれしいから笑うのではなく、笑うからうれしく感じるのだ・・・こういう話が大好きだ。あたりまえだと考えていた因果関係が逆転する。意外な驚きがあって、そのあと納得する。どこかで「自然は因果に関心を持たない」という表現を見た気がするけれど、因果関係は人間の解釈にすぎないのだというふうに考えると、いろいろとおもしろいことを発見できたりする。

因果といえば、仕事まわりで気になった因果の転回があった。

こういう人がターゲットだと想定して広告を送るのではなく、反応する人がターゲットなのだ。この考え方はおそらく「広告をつくる」とか「プランニングする」という作業の意味を劇的に変えてしまうと思う。(ペイドメディア 〜その「手売り」する価値〜 - 業界人間ベム

ブログを書いている人なら自然に納得できる論だと思う。書き続けていると、自分が書いている内容に興味がある人が寄ってくる。無理に読者を広げようと思って煽ったり無理のあることを書いたりするとそれなりに変な人も寄ってくる。ターゲットを決めてから投下するのではない。書いた内容によって、それに興味がある人が寄ってくる。出すと寄ってくる、それがメディアの特徴だと思う。

最近は似たような切り口で、MBAの話を聞いた。MBAに行って得られるものは、知識のようにも思えるが、それ以上に知り合いだという。要するに、MBAに行けばMBAに来るような人と知り合いになれるということだ。当然のように思えるけれど、これもメディアの話と同じように捉えることもできる。学校運営側からすれば、「学校を作ることで、それに興味がある人が寄ってくる」と表現することもできる。

商品開発業務においては、途中で「プロトタイピング」ということを行う。これは、まだ仕様が決まっていない段階で、木や段ボール、発泡スチロールなどといった素材を作って思うがままに手を動かし、モノを作ってみることだ。ここでひとつ、大切なことは、「頭の中にあるイメージを実際に作るのではない」ということ。適当に手を動かして組み合わせていくことによって、発見が生まれる。「考えて作るのではなく、作ることによって考える」のだ。

ブログを書くことだって同じだ。思いついたから書くのではない。書くと決めているから思いつく(正確には、ネタを無意識に探すようになる)のだ。出そうとすると、出すべきものが向こうから寄ってくる。因果関係の逆転。

でも実際、因果関係、あるいはその逆転に見えるものは、ぐるぐる回っている全体の一部を指しているにすぎないことも多い。あるメディアを作ると、その内容に興味がある人が寄ってくる。それに対応した内容にする。そうするとまたそれに興味のある人が・・・という連環がある。実際は、このような、試行錯誤にも似たプロセスを経ながらものごとは洗練されていくのだろう。なにが正解かわかっていないような状況では、このようなプロセスが大切になる。

ぐるぐる回る運用に関しては、どうも大切なことがあるようだ。それは、小さく行うこと。何かを試して、それで結果がでて、それを受けてまた試す。これを何回も繰り返すためには、コストも時間もかかる。だからこそ、できるだけ小さく始めなければいけない。ウェブのスタートアップでよく言われる「アジャイル」とか「小さく始めよ」ということは、そのことを示唆しているのだろう。

プランニングというものがアジャイルになる、つまり因果を逆転させたり、なんども試しながら、小さく素早く回していくべきものになる・・・ということはどうやら間違いない。個人レベルでいうなら、腰が軽くて、なんでも手早く手を出して繰り返して洗練させてしまう人の時代。プランナーの新しい姿というのが見えてきたように思う。