最高かつ最低

人が動いたり、惹きつけられたりする。その中心には、なんだか重力と引力を併せ持つ、巨大な何かが渦巻いている印象をもつ。

あの人（麻原彰晃）が優しいときには、私が人生の中で会った中で最高に優しい人になります。あの人の怖いときには、私が人生の中で会った中で最高に怖い人になります。そういう幅が恐ろしいくらいにありまして、だから話しているだけでもそういう神憑り的なものをひしひしと感じてしまうんです。（約束された場所で-underground2 村上春樹）

どうやって落とすのかと言えば、感情体積を大きくすること。感情というのは、板みたいなもので、あっちに押しやり、こっちに引き寄せ、これを連続していると、あっという間に体積が大きくできる。その体積を大きくするっていう行動をしていけば、いつの間にか落ちてしまう・・・そんなものなんだ。（異性をほぼ確実に落とす方法 - あるSEとゲーマーの四方山話）

最高な部分と最低な部分をあわせ持つ。その間を大きく移動するということが、人の心が動くということなのだろうか。

最高かつ最低になりたいと思う。今年も半分を過ぎたが、あらためて目標を「最高かつ最低」に置きたいくらいだ。では、最高かつ最低になるために、どう行動すればいいだろうか。「ギャップが大切だ」とまとめては、自分の行動に生かすことが難しい。いちいち各々の瞬間で、「よし、ギャップが大切、どっちのギャップにしよう？」と考えて振る舞うというのだろうか。そんな高速計算はできそうにない。

悪いやつってのは感情が強いんだ。女がこのジーパンで太く見えるかしらと聞いたときに、なよなよと答えない。あと彼らは自分のスタイルと言うのを確立している。理由はわからないが女性はしっかりカテゴライズできる男を好む。みんな逆に思っていて、女性は多趣味な男を好きだと考えている……違うね（モテない人に救いの手…恋愛のプロがネット上に現れ、みんなの質問に答える:らばQ）

スティーブは、スタッフがプレゼンをして統計的な分析を披露しても、まずは疑いの目を向けました。話は聞くし、それに基づいて考えもするのですが、内なる声を聞き、人にとって本当に大切な感情的なつながりを見失わないように努めていました。（“独裁者”スティーブ・ジョブズの真実：日経ビジネスオンライン）

最高かつ最低な人は、それを計算して行なっているわけではない。自分の中に沸き上がってきた感情や感覚を、精度高く突き詰めて外に出しているのだろう。人間の中には、人間の社会には、かならずジレンマが発生するようにできている。素直に、しかし徹底的に突き詰めてそれを表現するなら、結果として当然ジレンマも生じるし、摩擦が発生する。そうなれば外からの評価も、最高かつ最低にならざるをえない。

ウケるコンテンツになるには摩擦があることが重要。無理があること、反対があること。議論になること。みんなが行ける野原にはイチゴはなっていない。それらは刈り尽くされている。誰もが行くのをためらう崖の上に、イチゴが残っている（秋元康さんが語るマーケティングと総選挙（Think with google） - NAVER まとめ）

単に最高なものには惹かれるものが少ない。なんらか最高のものが出来上がっているのならば、そこに別の犠牲があると考えるのが人情でありリアリティというものだ。漠然と掲げられた理想や善には誰も批判をしないかもしれないが、なんの魅力もない。魅力がなければ誰も動かない。

最高なものはどこかで最低であり、最低なものはどこか最高なものだ。この2つには実際のところ違いはほとんどない、差を作る要素があるとすれば強度くらいだ。そこそこでいい、軋轢を生みたくないと思っているのか、ジレンマが起きてこそが力だと考えているか。つまり、純粋なのか、中途半端なのか。強度の違いが、差を生み出す。

最高を目指せ、もっと高みを目指せと言われ続けるのはきつい。でも、最低であってもいいから、徹底的にいけということなら、少しラクになる。最高の奴らばかりいる集団は息苦しいけど、最高かつ最低の奴らということなら、なんだか楽しそうだ。