β2

分業が熱い

スティーブ・ジョブズは、ちょっと前に自分の役割をこう話している。

アップルを知るために重要なことのひとつは、極めて協調して仕事をする会社だということ。アップルには内部団体がひとつもない。スタートアップのような組織だ。世界で最大のスタートアップ企業。毎朝3時間ミーティングをして、すべてのビジネスについて、どこでなにが起きているか情報交換をする。大得意なのは、課題をどう分割してチームに分担させるかを判断すること。チームどうしも話し合う。だから、わたしが一日じゅうやっているのは、優秀な人々のチームと顔をあわせて話すこと。優秀な人々を集めるには、かれらにアイデアを出させること。わたしもアイデアで貢献する。そうでなければここにはいない。
速報:スティーブ・ジョブズ インタビュー@ D8

「大得意なのは、課題をどう分割してチームに分担させるかを判断すること」という言葉、どうもひっかかる。大得意だと言っている。そうとう得意なのだろう。

そういえば新卒学生が就職活動で悩むことがある。企業のいう「コミュニケーション能力」。これはいったい何なのかということだ。営業として、口八丁手八丁で売ってくる能力を遠回しに言っているのだろうか?それとも、近頃の若者は挨拶さえしない、基本的なコミュニケーションをポポポポーン的なことを言っているのだろうか?

ダイソンの中の人の話。

日本をはじめ多くの国の企業は、デザイン部門とエンジニア(開発)部門が分かれている。それだけに、同じ会議の席に着くと意見の衝突も日常茶飯事だ。開発サイドはより性能を高くするために大型のモーターなどを使うことを提案するが、デザインサイドは小型で機能的な提案をする。そこには双方が納得できる、いわゆる「落としどころ」が必ず存在するのだ。

 しかしダイソンは違う。開発チームの一人ひとりが、デザイナーでもありエンジニアでもある。つまりデザイナーの立場の自分からはモーターの大きさや性能を考慮してスケッチを描き、エンジニアの立場からはよりハイスペックな製品を目指す。一人のデザインエンジニアは、デザインと開発という両輪を同時に進めて開発を行なっていくのだ。
家電-コラム-ダイソンのシンガポール/マレーシア工場に行ってきた!-その1 ダイソンの「デザインエンジニア」に製品作りの極意を開く!

分業がテーマだと思う。いまさら分業。
社会分業論とか、水平分業とか垂直分業とかそういう話をいま考えているわけではない。
わたしたちは、いかに分業すべきだろうか?ということだと思う。

ジョブズのワンマンである(と思われている)アップルでも、分業は行われているだろうし、ジョブズ自らがそれを大得意だというのだから、そこになんらかの工夫があるのだろう。新卒が頭を痛める「コミュニケーション能力」というのは、分業の世界でうまく生きていけますよ、という意味だ。ダイソンのデザインエンジニアのミソになっているのは、通常、葛藤が生まれてしまう(デザイナーとエンジニアで対立がおこる)ところを、一人の人間の中で統合することに意味を見いだしていることだ。

いずれも分業のことだ。分業論が、いますごく欲しい。

いわゆる消費者が、消費することに飽きたらず、自分でリペアしたり、友人同士で何かを作り出すとき。自分の役立った感が欲しくて、おもわずボランティアに手を出してしまうとき。企業の広報担当者がツイッター対応に悩む一方で、社長が「やりましょう!」と宣言して拍手喝采を浴びるとき。震災で、現場の職員が柔軟に動いて「神対応」と言われるとき。いずれもここには、いま分業で行き詰まっている何かが顔を出している。

つながる時代。マスの、巨大なコミュニケーション以外に大量の小さなつながりができあがり、それさえ可視化できてしまう時代。そこで出てくるのは、実は見えていなかった分業の問題。たぶん、その先には、分業の根源であるところの「効率」、そして効率の前提になる「目的」というものがもっと重く横たわっているのだろうけど。